原状回復工事の費用相場|間取り別・工事項目別の目安を解説
2026年8月3日
賃貸物件の退去が発生するたびに悩みの種となるのが、原状回復工事の費用です。「この見積もりは高すぎないか」「相場からかけ離れていないか」と判断に迷った経験を持つ大家さん・管理会社のご担当者は多いのではないでしょうか。
この記事では、原状回復の費用相場を間取り別・工事項目別に整理し、費用の内訳や負担区分の考え方、コストを抑えるためのポイントまでを実務目線で解説します。相場観を身につけておくことで、見積もりの妥当性を判断しやすくなり、退去精算のトラブル予防にもつながります。
原状回復工事の費用相場は「幅」で捉える
まず前提として、原状回復工事の費用は物件の状態・広さ・入居年数・地域・使用する建材のグレードによって大きく変動します。同じ間取りでも、丁寧に使われた部屋と喫煙やペット飼育で傷みの激しい部屋では、費用が数倍違うことも珍しくありません。
そのため相場は「1平方メートルあたり◯円」「1部屋あたり◯円〜◯円」といった幅を持った目安として把握するのが実務的です。以下で紹介する金額はあくまで一般的なレンジであり、実際の見積もりを保証するものではない点にご注意ください。
なお、そもそも原状回復とは何を指すのかについては、原状回復とは?国土交通省ガイドラインの基本をわかりやすく解説もあわせてご確認ください。
間取り別の費用相場の目安
退去時にかかる原状回復費用(クリーニングを含む一般的な軽度〜中度の工事を想定)の間取り別の目安は、おおむね次のとおりです。
| 間取り | 専有面積の目安 | 費用相場(目安) |
|---|---|---|
| ワンルーム・1K | 20〜30㎡ | 3万〜10万円程度 |
| 1LDK・2K | 30〜45㎡ | 6万〜18万円程度 |
| 2LDK・3K | 45〜60㎡ | 10万〜30万円程度 |
| 3LDK・4K以上 | 60㎡〜 | 15万〜50万円程度 |
この金額はハウスクリーニングとクロスの部分張り替え程度を含めた一般的なケースを想定したものです。全面的なクロス張り替えや床材の全面交換が必要になると、さらに費用は上振れします。喫煙やペット飼育、水漏れ・カビなどの特殊事情があると、ワンルームでも20万円を超えることがあります。
また、入居期間が長いほど工事範囲が広がる一方で、後述する経年劣化・通常損耗分は貸主負担となるため、借主に請求できる金額は必ずしも工事総額と一致しません。
工事項目別の費用相場
次に、原状回復工事を項目ごとに分解して単価の目安を見ていきましょう。見積書の内訳をチェックする際の参考にしてください。
クロス(壁紙)の張り替え
クロスは原状回復で最も発生頻度の高い項目です。
- 量産品クロス:1平方メートルあたり1,000〜1,500円程度
- 機能性・高グレードクロス:1平方メートルあたり1,500〜2,500円程度
クロスには耐用年数の考え方があり、一般的には6年程度で残存価値がほぼ1円まで減少するとされています。経過年数に応じて借主負担割合が下がるため、張り替え費用の全額を借主に請求できるわけではありません。詳しくはクロスの原状回復費用相場と耐用年数6年の考え方で図解しています。
床(フローリング・クッションフロア・畳)
| 床材 | 費用相場(目安) |
|---|---|
| クッションフロア張り替え | 1㎡あたり3,000〜5,000円程度 |
| フローリング補修(部分) | 1箇所あたり2万〜5万円程度 |
| フローリング全面張り替え | 1畳あたり2万〜5万円程度 |
| 畳表替え | 1枚あたり4,000〜7,000円程度 |
| 畳新調 | 1枚あたり1万〜2万円程度 |
フローリングの傷やへこみは、誰の負担になるかの判断が分かれやすい項目です。判断基準についてはフローリングの傷・へこみは誰の負担?で詳しく解説しています。
ハウスクリーニング
ルームクリーニングは退去時にほぼ必ず発生します。間取りに応じた相場は次のとおりです。
- ワンルーム・1K:1.5万〜4万円程度
- 1LDK〜2LDK:3万〜6万円程度
- 3LDK以上:5万〜10万円程度
エアコン内部洗浄、レンジフード分解洗浄などのオプションは別途1台・1箇所あたり1万〜2万円程度が加算されることが一般的です。
その他の工事項目
- 建具・ドアの補修:5,000〜3万円程度
- 設備(水栓・コンロなど)の交換:1万〜5万円程度
- 鍵(シリンダー)交換:1万〜2.5万円程度
- ハウスクリーニングでは落ちない臭気・ヤニの脱臭施工:1万〜数万円程度
喫煙によるヤニ汚れは費用も高額になりやすく、負担をめぐるトラブルも起きがちです。請求可否についてはタバコのヤニ汚れ・臭いの原状回復費用は請求できる?を、ペット飼育物件についてはペット可物件の原状回復|傷・臭い対策と特約の実務ガイドを参考にしてください。
費用相場を左右する「負担区分」の考え方
原状回復費用を考える際に欠かせないのが、貸主負担と借主負担の切り分けです。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年劣化や通常の使用による損耗(通常損耗)は原則として貸主負担、借主の故意・過失や善管注意義務違反による損傷は借主負担とする考え方が示されています。
つまり、工事の総額がそのまま借主への請求額になるわけではありません。たとえばクロスの張り替えが必要でも、入居年数が長ければ経過年数に応じて借主負担割合が減り、貸主が一定額を負担することになります。
この区分を誤ると過大請求とみなされ、敷金返還トラブルに発展するおそれがあります。負担の境界線については原状回復費用の負担区分|貸主負担と借主負担の境界線を解説、経年劣化と通常損耗の違いは経年劣化と通常損耗の違いとは?で具体例とともに解説しています。
また、特約によって借主負担の範囲を広げているケースもありますが、特約が常に有効になるとは限りません。有効・無効の判断については原状回復の特約は有効?無効?判例から見る特約の限界をご確認ください。
原状回復費用を適正に抑えるためのポイント
費用を「削る」というより、「適正な金額に保つ」という観点で、実務上できることを整理します。
1. 複数社から見積もりを取る
同じ工事内容でも業者によって金額差が出ることは珍しくありません。相場観を持ったうえで複数社を比較することで、極端に高い見積もりを避けやすくなります。業者選びに迷ったら退去立会い代行・原状回復・クリーニング会社を比較できる当サイトもご活用ください。
2. 退去立会いを丁寧に行い、状態を記録する
退去時の部屋の状態を写真や書面で正確に記録しておくことは、後の精算根拠になります。見落としを防ぐには退去立会いチェックリスト完全版が役立ちます。立会いを省くとトラブルや過剰請求の火種になりやすいため注意が必要です。
3. 入居時の状態を残しておく
入居前からあった傷や汚れを借主負担にしてしまうと、後で紛争になります。入居時・退去時の双方の状態が明確であるほど、負担区分の判断がスムーズになります。
4. 敷金精算の流れを整理しておく
見積もりと負担区分が確定したら、敷金からの精算に進みます。返還時期や明細の提示方法を整えておくことでトラブルを防げます。詳しくは敷金返還のルールと精算の流れをご覧ください。
見積もりチェック時に確認したい項目
工事会社から見積もりを受け取ったら、次の点を確認するとよいでしょう。
- 工事項目ごとに数量(㎡・箇所数)と単価が明記されているか
- 「一式」表記が多すぎないか(内訳が不透明な場合は確認する)
- 経過年数を考慮した負担割合の按分がされているか
- クリーニングと工事の費用が重複していないか
- 借主負担分と貸主負担分が区分されているか
特に「一式」でまとめられた見積もりは、金額の妥当性が判断しにくいため、内訳の提示を求めることをおすすめします。
まとめ
原状回復工事の費用相場は、間取りや部屋の状態、使用建材によって大きく幅があります。本記事で示した目安をまとめると、以下のとおりです。
- 間取り別の目安:ワンルームで3万〜10万円程度、ファミリータイプで15万〜50万円程度
- 工事項目別ではクロス・床・クリーニングが費用の中心
- 工事総額がそのまま借主請求額になるわけではなく、負担区分と経過年数の按分が重要
- 複数見積もりの比較と、丁寧な退去立会い・記録がトラブル防止と適正費用につながる
相場観を持って見積もりを確認し、負担区分を正しく切り分けることが、過剰請求や敷金トラブルを防ぐ第一歩です。関連する実務知識はコラム一覧でもさまざまに解説していますので、あわせて参考にしてください。