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原状回復費用の負担区分|貸主負担と借主負担の境界線を解説

原状回復費用の負担区分|貸主負担と借主負担の境界線を解説

2026年7月24日

コラム投稿元 退去立会い代行・原状回復Navi運営チーム

賃貸物件の退去時、最もトラブルになりやすいのが「この費用は誰が負担するのか」という原状回復費用の負担区分です。畳の日焼けは大家負担なのか、壁のクギ穴は借主負担なのか——判断基準があいまいなまま請求すると、借主とのトラブルや敷金返還をめぐる紛争に発展しかねません。

この記事では、原状回復の負担区分について、貸主負担と借主負担の境界線を国土交通省のガイドラインの考え方に沿って整理します。具体例を表形式で多数示しながら、大家・管理会社の実務でそのまま使える判断のポイントを解説します。読み終える頃には、退去精算の場面で自信を持って説明できるようになるはずです。

原状回復の基本的な考え方

まず前提として、原状回復とは「借りた当時の状態に完全に戻すこと」ではありません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を次のように定義しています。

賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

つまり、普通に暮らしていて自然に生じる劣化(通常損耗・経年変化)は貸主負担借主の使い方が原因で生じた損耗・毀損は借主負担、というのが基本的な考え方です。ガイドラインの基本については原状回復とガイドラインの基本を解説した記事もあわせてご覧ください。

負担区分を判断する2つの軸

負担区分を考えるときは、次の2つの軸で整理すると分かりやすくなります。

判断の軸 貸主負担になりやすい 借主負担になりやすい
損耗の原因 経年変化・通常損耗 故意・過失・善管注意義務違反
使い方の程度 通常の使用の範囲内 通常の使用を超える使い方

この2軸を頭に入れておくと、個別のケースでも判断がぶれにくくなります。

貸主(大家)負担となる代表的なケース

一般的に、次のような損耗は「通常損耗」や「経年変化」に該当し、貸主負担とされることが多いものです。これらは家賃に含まれて回収されているという考え方が背景にあります。

箇所 具体例 負担の考え方
壁・天井 日照など自然現象による壁紙の変色 経年変化のため貸主負担
テレビ・冷蔵庫の裏の電気焼け(黒ずみ) 通常使用によるもので貸主負担
画鋲・ピンの穴(下地ボードの張替え不要な程度) 通常の範囲内とされ貸主負担
家具の設置による床・カーペットのへこみ、跡 通常使用によるもので貸主負担
畳の日焼け(自然な色あせ) 経年変化のため貸主負担
フローリング 経年劣化による色落ち 経年変化のため貸主負担
設備 設備・機器の自然な故障、寿命による交換 貸主負担
全体 次の入居者確保のためのハウスクリーニング(通常清掃済みの場合) 原則貸主負担

ポイントは、「普通に生活していれば避けられない損耗」は貸主が負担するという点です。借主に「新品同様に戻せ」と求めることはできない、と考えておくのが安全です。

借主(入居者)負担となる代表的なケース

一方で、次のような損耗は借主の故意・過失や手入れ不足、通常の使用を超える使い方が原因とされ、借主負担となることが一般的です。

箇所 具体例 負担の考え方
落書き、故意による破損 故意によるもので借主負担
結露を放置して拡大させたカビ・シミ 手入れ不足(善管注意義務違反)で借主負担
クギ・ネジ穴(下地ボードの張替えが必要な程度) 通常使用を超えるため借主負担
タバコのヤニ・臭いによる変色(喫煙が原因) 通常使用を超えるとされることが多い
飲みこぼしの放置によるシミ・カビ 手入れ不足で借主負担
引越し作業や家具移動でつけた深い傷 過失による毀損で借主負担
フローリング 水漏れを放置して生じた腐食 善管注意義務違反で借主負担
キッチン 手入れ不足による油汚れ・カビ 通常清掃を怠ったため借主負担
設備 借主の不注意で壊した設備・鍵の紛失による交換 過失によるもので借主負担

借主負担となるかどうかの分かれ目は、**「損耗を防げたか」「手入れを怠っていないか」**という点です。たとえば結露は自然現象ですが、拭き取らずに放置してカビを広げた場合は、善管注意義務違反として借主負担が問われることがあります。

タバコとペットは特に注意

実務でトラブルになりやすいのが喫煙とペット飼育です。

  • 喫煙:ヤニによる壁紙の変色や臭いは、通常使用を超える汚損とされることが多く、クロス張替え費用が借主負担となるケースがあります。
  • ペット:ペット可物件でも、爪による傷、臭い、汚損については借主負担が認められやすい傾向があります。

いずれも契約書に特約として明記しておくことで、退去時の説明がスムーズになります。

「経過年数(減価償却)」の考え方を忘れない

負担区分でつまずきやすいのが、借主負担でも全額を請求できるとは限らないという点です。ガイドラインでは、クロスや床材などに経過年数(耐用年数)の考え方を取り入れ、時間の経過とともに借主の負担割合を減らすとしています。

項目 考え方の例
壁クロス 一般的に6年で残存価値1円まで償却するとされ、入居年数が長いほど借主負担割合は下がる
クッションフロア等 おおむね6年程度で償却するとされる
設備・造作 種類ごとに耐用年数が異なる

たとえば入居6年を超えた時点でクロスを汚損した場合でも、クロスの価値はほぼゼロまで下がっているため、借主に張替え費用の全額を請求することは難しくなります。ただし、張替えに伴う施工費(手間賃)については借主負担となる場合があるとされており、この点も丁寧に説明できると納得を得やすくなります。

こうした計算や説明は退去立会いの現場で必要になります。立会いの現場で見落としがちな箇所は退去立会いチェックリストの記事で整理しているので、実務の参考にしてください。

特約による負担区分の変更と注意点

契約書に特約を設けることで、通常損耗の一部を借主負担とすることは可能とされています。ただし、無制限に認められるわけではなく、一般的には次の要件が求められるとされています。

  1. 借主が特約の内容を認識し、合意していること
  2. 負担が通常損耗の範囲を超える合理性があること、または借主が明確に義務を負う意思表示をしていること
  3. 内容が具体的で、借主に一方的に不利すぎないこと

あいまいな文言(例:「退去時はハウスクリーニング費用を借主が負担する」など)でも、金額や範囲が明示され、借主が合意していれば有効とされるケースがあります。逆に、説明が不十分なまま一方的に重い負担を課す特約は、無効と判断されるリスクがあります。

特約を設ける場合は、入居時に金額・範囲を明示し、借主の署名・押印で合意を確認しておくことが、後のトラブル予防につながります。負担区分をめぐる紛争の予防策については退去立会いでトラブルになりやすいポイントの記事もあわせてご覧ください。

実務で負担区分を巡るトラブルを防ぐには

負担区分の判断基準を理解していても、退去の現場では借主との認識のズレが生じがちです。次のような対応が有効とされています。

  • 入居時の状態を写真・チェックシートで記録する:入居時からあった傷か、退去時についた傷かを客観的に判断できます。
  • 退去立会いで損耗箇所を一緒に確認する:その場で写真を撮り、原因と負担区分の見解を共有します。
  • 請求根拠を書面で示す:ガイドラインの考え方や経過年数を反映した計算根拠を提示すると、納得を得やすくなります。

これらを大家本人だけで対応するのが難しい場合は、専門知識を持つ代行会社に立会いや精算を任せる選択肢もあります。負担区分の説明を第三者が客観的に行うことで、感情的な対立を避けられるメリットがあります。業者選びを検討する際は、退去立会い代行・原状回復会社を比較できる当サイトを活用してみてください。遠方物件で立会いが難しい場合の選択肢は遠方物件の立会い対応をまとめた記事でも解説しています。

まとめ

原状回復の負担区分は、次のポイントを押さえておくことで、実務での判断がぶれにくくなります。

  • 通常損耗・経年変化は貸主負担故意・過失・善管注意義務違反は借主負担が基本
  • 日焼けや家具のへこみなどは貸主負担、落書きや手入れ不足によるカビ、喫煙・ペットによる汚損などは借主負担となりやすい
  • 借主負担でも、クロスや床材は経過年数を反映して負担割合が下がる点に注意
  • 特約で負担区分を変更する場合は、金額・範囲の明示と借主の合意が重要
  • 入居時の記録と退去立会いでの確認、書面での請求根拠提示がトラブル予防の鍵

なお、費用負担の解釈は個別の契約内容や状況によって異なり、最終的な判断は専門家への相談や実際の運用に委ねられます。本記事で紹介した考え方はあくまで一般的な目安として、自物件の状況に合わせて活用してください。負担区分を正しく理解し、根拠を持って説明できるようになれば、退去精算のトラブルは大きく減らせるはずです。

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