退去立会いなしで退去させても大丈夫?リスクと予防策を解説
2026年7月13日
賃貸物件の退去時、日程が合わなかったり遠隔地だったりして「退去立会いなしで退去させても大丈夫だろうか」と悩む大家さんや管理会社の担当者は少なくありません。結論から言えば、立会いなしでの退去は法律上必ずしも禁止されているわけではありませんが、原状回復費用をめぐるトラブルや証拠不足による回収不能といったリスクが高まります。
この記事では、退去立会いなしで退去させた場合に起こりやすいトラブル事例と、大家・管理会社が取るべき予防策・対処法を実務目線で解説します。読むことで、立会いを省略する際に押さえるべきポイントと、リスクを最小化する具体的な手順がわかります。
そもそも退去立会いは必須ではない
退去立会いは、多くの賃貸契約で慣習的に行われていますが、法律で義務付けられた手続きではありません。そのため、賃借人・貸主双方の合意があれば、立会いなしで退去手続きを進めること自体は可能です。
ただし、退去立会いには次のような重要な役割があります。
- 室内の損耗・汚損状況を双方で確認し、記録する
- 原状回復費用の負担範囲について認識をすり合わせる
- 鍵の返却と明け渡し完了を確認する
- 残置物の有無を確認する
これらを省略すると、後日の費用精算で「言った・言わない」の争いが生じやすくなります。立会いの基本的な流れや役割については、退去立会いとは?流れ・所要時間・当日の持ち物まで徹底解説もあわせてご覧ください。
退去立会いなしで起こりやすいトラブル事例
実務でよく見られるトラブルを、原因別に整理します。
1. 原状回復費用をめぐる認識のズレ
最も多いのが、費用負担についての争いです。立会いをしていないと、退去後に貸主側が損耗を確認して費用を請求しても、賃借人から「入居時からあった傷だ」「自分がつけたものではない」と反論されるケースが少なくありません。
一般的に、経年変化や通常使用による損耗(通常損耗)は貸主負担、賃借人の故意・過失による損耗は賃借人負担とされており、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも同様の考え方が示されています。しかし立会いによる現状確認の記録がないと、どちらが原因かを立証しづらくなります。
2. 証拠不足による費用回収の失敗
立会いなしの場合、退去後に貸主が単独で撮影した写真しか証拠がないことが多く、「その傷がいつ・誰によってできたか」を客観的に示すのが難しくなります。争いが敷金返還請求などに発展した場合、証拠の弱さが不利に働くことがあります。
3. 残置物・鍵に関するトラブル
立会いをしないと、退去日に室内の残置物の有無や鍵の返却状況を確認できません。後日、大量の家具や私物が残されていたり、鍵が一部返却されていなかったりして、追加の処分費用や鍵交換費用が発生することがあります。残置物は勝手に処分すると法的な問題になり得るため、対応に手間がかかります。
4. 明け渡し完了時期の争い
立会いによる明け渡し確認がないと、いつをもって明け渡しが完了したかが曖昧になり、日割り賃料や次の入居募集のタイミングでトラブルになることがあります。
トラブルを防ぐための予防策
立会いなしで退去を進める場合でも、以下の対策を講じることでリスクを大きく減らせます。
入居時の記録を残しておく
トラブル予防の基本は、入居時と退去時の状態を比較できるようにしておくことです。
| タイミング | 残しておくべき記録 |
|---|---|
| 入居時 | 室内全体の写真・チェックリスト(入居者と共有) |
| 退去時 | 室内全体の写真・動画、鍵返却の記録 |
入居時に写真付きのチェックシートを作成し、賃借人にも確認・署名をもらっておくと、退去時の損耗が「もともとあったもの」か「入居中に生じたもの」かを判断しやすくなります。
賃借人に写真・動画で記録を送ってもらう
立会いができない場合、退去時に賃借人自身へ室内の写真や動画を撮影してもらい、日付がわかる形で送ってもらう方法があります。双方が同じ記録を保有することで、後日の認識のズレを減らせます。
書面で費用負担の考え方を事前に共有する
退去前に、原状回復の負担区分の考え方(通常損耗は貸主負担、故意過失は賃借人負担など)を書面やメールで説明しておくと、精算時のトラブルが起きにくくなります。契約書や特約の内容も、賃借人が理解しているか改めて確認しておくとよいでしょう。
鍵返却と明け渡し日を明確にする
鍵の返却方法(郵送・宅配ボックス・管理会社への持参など)と、明け渡し完了日を事前に取り決め、記録に残しておきましょう。
それでも立会いを行う価値は大きい
ここまで予防策を紹介しましたが、可能であれば立会いを行うほうが安全であることに変わりはありません。立会いでは双方がその場で現状を確認し合うため、後日の争いを未然に防ぎやすいからです。
「日程が合わない」「遠方で対応できない」「件数が多くて手が回らない」といった理由で立会いが難しい場合は、専門の代行会社を利用する選択肢があります。代行会社は現状確認と写真記録、原状回復の見積もり作成までを一括して対応してくれるため、立会いなしのリスクを避けつつ手間を削減できます。
代行サービスの内容や費用感については、退去立会い代行とは?管理会社・大家が利用するメリットと費用相場で詳しく解説しています。また、誰が立会いを担当すべきか迷う場合は、退去立会いは誰が行うべき?大家本人・管理会社・代行会社の違いを比較も参考になります。
自社の状況に合った代行会社を探したい場合は、退去立会い代行・原状回復・クリーニング会社を比較できる「退去立会い代行Navi」から条件に合う業者を検索できます。
立会いなしで退去させる際のチェックリスト
どうしても立会いなしで進める場合は、最低限次の項目を押さえておきましょう。
- 入居時の室内写真・チェックシートが手元にある
- 退去時の室内写真・動画を賃借人と共有できている
- 鍵の返却方法と返却日を取り決めている
- 残置物の有無を確認・記録している
- 費用負担の考え方を事前に書面で説明している
- 明け渡し完了日を双方で確認している
これらを揃えておくことで、後日のトラブルが起きても対応がしやすくなります。
まとめ
退去立会いなしで退去させること自体は違法ではありませんが、原状回復費用の争いや証拠不足による回収不能、残置物・鍵のトラブルなど、さまざまなリスクが伴います。立会いを省略する場合は、入居時・退去時の写真記録、費用負担の事前説明、鍵と明け渡し日の取り決めなど、記録と合意を丁寧に残すことが重要です。
リスクを避けつつ手間を減らしたいのであれば、退去立会い代行会社の活用も有効な選択肢です。自社の物件数や運営体制に合った方法を選び、トラブルの少ない退去手続きを目指しましょう。