原状回復工事の費用相場と見積もりの見方|クロス・床・設備別の目安
2026年9月8日
原状回復工事の費用は「項目×単価×数量」で読む
原状回復工事の見積もりを正しく判断するために最初に押さえたいのは、費用は「一式いくら」ではなく「工事項目ごとの単価×数量」で決まるという点です。クロスなら㎡あたりの単価に張替え面積を掛け、クリーニングなら間取りごとの基本料金にオプションを加える、という構造になっています。この構造が分かれば、見積書の妥当性を項目単位で確認でき、借主負担分の算出や相見積もりの比較も容易になります。
本記事では、居住用賃貸の原状回復工事について、主要な工事項目ごとの費用相場の目安、見積書の読み方、相見積もりで比較すべきポイントを整理します。なお、ここで示す金額はいずれも一般的な目安であり、地域・物件のグレード・施工会社・時期によって幅があります。実際の費用は必ず見積もりで確認してください。
工事項目別の費用相場の目安
壁紙(クロス)
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 量産品クロス張替え | 1㎡あたり1,000〜1,500円程度 | 下地処理が必要な場合は加算 |
| 1K・1R(壁・天井全面) | 4万〜8万円程度 | 面積40〜50㎡前後 |
| 2LDK(壁・天井全面) | 12万〜20万円程度 | 部屋数と天井高で変動 |
クロスは原状回復工事で最も頻度の高い項目です。見積書の単位が「㎡」か「m(メーター)」かで数量の読み方が変わります。メーター単価は幅約90cmのクロス1mあたりの単価であり、㎡単価に換算すると1.1倍前後になる点に注意が必要です。
なお、借主の汚損によるクロスの張替えを借主に請求する場合、国土交通省のガイドラインではクロスの耐用年数を6年とし、6年経過で残存価値1円と考えます。工事費用が全額借主負担になるわけではない点は、原状回復の負担区分 で解説しています。
床材
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| クッションフロア張替え | 1㎡あたり2,500〜4,500円程度 | 洗面所・トイレは数千円〜1万円台 |
| カーペット張替え | 1㎡あたり3,000〜6,000円程度 | 材質で大きく変動 |
| フローリング部分補修 | 1箇所あたり数千円〜3万円程度 | 傷の深さ・範囲で変動 |
| フローリング重ね張り・張替え | 1㎡あたり8,000〜2万円以上 | 既存床の撤去の有無で大きく変動 |
| 畳表替え | 1畳あたり5,000〜1万円程度 | 畳床の交換はさらに加算 |
床は「部分補修で済むか、全面張替えが必要か」で費用が大きく変わります。ガイドラインではフローリングの原状回復は部分補修が原則とされているため、借主負担分を算出する際は、全面張替えの費用をそのまま借主に請求しないよう注意が必要です。
設備・建具
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 鍵交換(シリンダー) | 1万5,000〜3万円程度 | 防犯性の高い鍵はさらに加算 |
| エアコン交換(6畳用) | 6万〜12万円程度 | 本体+工事費 |
| 給湯器交換 | 10万〜25万円程度 | 号数・機能で変動 |
| 温水洗浄便座交換 | 3万〜8万円程度 | |
| 網戸張替え | 1枚あたり3,000〜6,000円程度 | |
| 襖・障子の張替え | 1枚あたり3,000〜8,000円程度 | |
| 室内ドア・建具の補修 | 1万〜5万円程度 | 交換の場合はさらに加算 |
設備の交換は、経年劣化によるものであれば貸主負担です。借主の過失による破損であっても、設備の耐用年数(エアコンなどは6年、便器・洗面台などの給排水・衛生設備は15年)を考慮して負担割合を算出します。
ハウスクリーニング
| 間取り | 目安 |
|---|---|
| 1R・1K | 2万〜4万円程度 |
| 1LDK・2DK | 3万〜6万円程度 |
| 2LDK・3DK | 5万〜8万円程度 |
| 3LDK以上 | 6万〜10万円以上 |
エアコン内部洗浄(1台1万〜2万円程度)やレンジフード分解洗浄、ベランダ清掃などはオプション扱いのことが多く、基本料金に含まれるかどうかを確認します。クリーニング費用を借主負担にできるのは、有効な特約がある場合に限られる点にも注意してください。
見積書の読み方:確認すべき5つのポイント
見積書を受け取ったら、金額の合計だけでなく次の点を確認します。
- 単位と数量の根拠:㎡・m・箇所・式のどれで計上されているか。面積は図面や実測と一致しているか
- 「一式」の内訳:一式表記の項目は、何が含まれるかを質問して書き出してもらう
- 諸経費・養生費・廃材処分費:工事費の5〜15%程度が一般的な目安。異常に高い場合や重複計上がないかを見る
- グレードの指定:クロスや床材が量産品か中級品か。募集条件に合わせた仕様になっているか
- 工期と着工可能日:次の募集開始日から逆算して間に合うか。繁忙期は着工待ちが発生しやすい
とくに借主への請求に使う見積書は、項目ごとに「貸主負担」「借主負担」の区分を付けられる粒度になっていることが重要です。一式表記のままでは負担区分の算出ができず、精算明細の根拠として使えません。精算明細の作り方は 敷金精算の流れとトラブル防止策 を参照してください。
相見積もりで比較するときの注意点
複数の会社から見積もりを取る場合、単純な合計金額の比較は誤解のもとになります。次の点をそろえたうえで比較します。
- 工事範囲を同じ条件で依頼する:退去立会いの報告書や写真を全社に共有し、同じ箇所・同じ仕様で見積もってもらう
- 含まれる項目をそろえる:クリーニングや廃材処分、養生費が含まれているかを確認して比較する
- 単価と数量を項目ごとに並べる:合計ではなく、クロス㎡単価・CF㎡単価・クリーニング基本料金など主要項目で比べる
- 繁忙期の対応力を聞く:安くても着工が1か月先では空室損失の方が大きくなる
- 立会いから工事まで一貫して頼めるか:立会いと工事が別会社だと、現地確認と日程調整が二重になる
安さだけで選ぶと、仕様のグレードが落ちて次の募集に響いたり、追加請求が発生したりすることがあります。「単価が明確で、内訳が説明できる会社」を選ぶ方が、結果として総コストは抑えやすくなります。
費用を抑えつつ空室期間を短くする考え方
原状回復費用は、工事単価を下げるだけでなく、段取りを工夫することでも抑えられます。
- 退去立会いの段階で工事範囲を確定する:立会いで写真と損耗箇所を確定させておけば、見積もりが早く出て着工も早まる
- 部分補修と全面張替えを使い分ける:ガイドラインの原則どおり部分補修で済むものは部分補修にし、募集上必要な箇所だけ全面張替えにする
- 退去前に発注準備を進める:解約通知を受けた時点で施工会社に日程を仮押さえしておくと、明渡し直後に着工できる
- クリーニングと工事の順序を決める:工事後にクリーニングを入れる順序にしないと、二度手間になる
退去立会いから工事・クリーニングまでを同じ会社に任せると、こうした段取りが一本化され、空室期間の短縮につながります。退去立会い代行の活用については 退去立会い代行とは? で解説しています。
まとめ
原状回復工事の費用は、クロスなら1㎡あたり1,000〜1,500円程度、クッションフロアなら1㎡あたり2,500〜4,500円程度、1Kのクリーニングなら2万〜4万円程度といった目安があり、いずれも「項目×単価×数量」の構造で決まります。見積書は合計額ではなく、単位・数量・一式の内訳・諸経費・グレードを項目単位で確認し、相見積もりは同じ条件でそろえて比較することが大切です。借主負担分の算出には、ガイドラインの経過年数や負担範囲の考え方を反映する必要があります。
物件所在地で原状回復工事や退去立会いに対応できる会社を探す際は、退去立会い代行・原状回復Naviの神奈川県や愛知県などのエリアページから、対応業務と対応エリアを比較してみてください。